2017.9.20カテゴリー:印鑑について
前回の記事では、落款印についてお伝えしました。 捺す場所の違いなど、印面に彫る文字の違いなど、落款印の世界は非常に深いことが伝わりましたでしょうか。 もしかしたら、「始めてみようかな…」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。 落款印の作成には2つの方法があります。 1つ目は、ハンコ屋で注文することです。 費用は掛かってしまいますが、オーダー通りの印鑑を手にすることができるでしょう。 2つ目は、自作することです。 落款印は、絵画などに用いる印鑑だということを前回の記事でお伝えしました。 どうせなら、自分の世界は自分だけのモノを使って完成させたいですよね。 どちらの方法が良いかは人によって異なるでしょう。 今回の記事では、2つ目の落款印を自作する方法についてお伝えします。 落款印を作って、自分世界に深みを生み出しませんか。 今回は、落款印の中でも比較的自由度の高い白文印の引首印と遊印の作り方についてご紹介します。
印面のデザインから考える
彫りたい文字を紙やメモにデザインしてください。 できるだけ白い紙を使った方が、印面を彫る際に作業がしやすくなります。 下書きはいくらでも訂正ができるため、納得のいくまで行いましょう。 最高のデザインができたら、それをプリンターなどでコピーしてください。 下書きを使って印面を彫ってしまうと、印影は左右反対に成ってしまいます。 印鑑の特性をしっかりと把握した上で作業を行ってください。 コピーする工程があることを考えると、下書きもできるだけ濃く書いた方が良いかもしれませんね。 下書きの完成度によって、印鑑の完成度が変わります。 「下書きだから」と甘く見て、適当に作業してしまうことが無いようにしてください。
印鑑の作業に移る
印面に予定している所が平らに成るまで、やすりがけをしてください。 鉛筆などで印をつけて、それを消すように研磨すれば今の印面が平らかどうかわかりやすいです。 ここをしっかりと研磨しなければ、綺麗な印影を付けることが難しくなってしまいます。 自分で作った印鑑を愛用するためにも、丁寧に研磨しましょう。 印面が平らに成ったら、朱色の墨を塗ってください。 多少のムラは無視しても問題ありません。 しかし、薄くなることだけは避けてください。 少し濃くするぐらいの気持ちで、墨を塗っていきましょう。
コピーした下書きを用意
デザインが書いてある面と先程墨を塗った面を合わせましょう。 コピーした紙が動かないように固定することで、文字がぶれることなく印面に移しやすくなります。 多くの工程がある作業では、次の工程を意識して、作業をしていってください。 紙を印鑑に固定できたら、黄色のマジックインキで印面を塗りつぶしていきましょう。 それによって、コピーしたインクが紙から浮き上がって、印鑑にデザインが写ります。 ある程度時間が経ったら、紙を外してください。 綺麗に写りましたでしょうか? もし、写りが薄いようだったら、ペンなどを使って線を補強してください。 文字が薄いまま彫る作業に入ってしまうと、始めからやり直す事態に成ってしまうかもしれません。 デザインの良さを保つためにも、線はしっかりと書きましょう。
インクが乾いたら、文字を彫っていきましょう
今までの作業とは異なり、尖っているモノを扱うためケガには配慮してください。 手元が狂って、デザインが変わってしまうことあるでしょう。 それも印鑑作成における味の一つです。 とりあえず、作業を続けて、その味を活かした印鑑にしたり、次彫る時の教訓にしたりしてください。 それが終わったら、試し捺しをしましょう。 印面の文字は想像通りでしたか? 彫り残しやイメージの違いなどがあったら、削り取っていってください。 理想の印鑑にするためにも、手間をかけましょう。
落款印とは?その使用用途についても解説します!
落款印とは、篆刻印や遊印とも呼ばれる書道作品や日本画などにサインとして押される印鑑です。
実印などと異なり、自由で遊び心があり、印面は文字である必要もありません。
つまり、刻印される文字が誤っていても問題はありません。
作る際に誤って文字やフチが欠けていても、落款印の「味」になるので、個性がでた唯一の印鑑になるのです。
また、先ほど書道作品や日本画などにサインとして押されるとお伝えしましたが、これ以外にも用途が挙げられます。
例えば、年賀状やハガキ、お手紙や名詞などに使われます。
アクセントとして押しても風合いがでます。
そもそも落款印自体が自由で遊び心のある印鑑。
元々は、個人や組織を特定したり証明したりするために使われていましたが、使い方は、人それぞれです。
気軽な気持ちで落款印にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
落款印の作成方法をご紹介!
落款印は、上記でお伝えしたように、年賀状やハガキなどでも使用できます。
みなさんも落款印を自分で作って、年過剰やハガキなどに押してみませんか?
「失敗したらどうしよう」「難しそう」
と考える方もいらっしゃいますが、素人っぽい彫りの方が「味」が出るので、気軽に作成できます。
誰でも気軽に作れる落款印の作成方法をご紹介するので、ぜひチャレンジしてみてください。
1.準備物を揃える
準備するものは、次の10個です。
・掘りやすい石
・彫刻刀
・紙
・レーザープリンター
・やすり
・朱色の墨
・小筆
・黄色のマジックインク
・朱肉
掘りやすい石・彫刻刀・紙の3つは、「初心者篆刻セット」などを購入すると、全て揃えられます。
掘りやすい石は「青田石」や「巴林石」など、彫刻刀は「印刀」や「平刀」を準備すると良いでしょう。
加えて、朱床があれば、便利です。
2.印影デザインの下書きをする
まずは、印影デザインを考えましょう。
正式な書や絵画などに押印することを目的として作成するのであれば、フォントは篆書体がおすすめです。
「篆書体は難しい」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、キットを購入して書体見本を利用するか、印影プレビューを見てデザインすると上手にできます。
3.石に印影デザインを転写する
次に、石の準備をしましょう。
石の印面をやすりで平らにして、印面の凸凹を無くしましょう。
このとき、平らになっていなければ、最終的な仕上がりに影響するので、十分にやすりで平らにすることをおすすめします。
十分にやすりがけができたら、印面に朱色の墨をたっぷりと塗って、乾かします。
印影デザインを朱色の炭を塗った印面にピタリと合わせて、固定してください。
固定したら、黄色のマジックで印面を塗り、レーザープリンターのインクを印面に転写します。
転写する際は、裏表逆にならないように注意しましょう。
逆になっていると、ハンコを押したときに、印影が反対になってしまいます。
4.篆刻
印面に印影デザインを転写できたら、彫刻刀でデザインを彫っていきましょう。
掘る作業のことを篆刻というのですが、篆刻をするときは、インクが十分に乾いているかを確認してから作業開始してください。
転写程度が甘い場合は、ペンなどでデザインに修正を加えてから彫ると、作業をスムーズに進められます。
このとき、「彫ってしまうと、後戻りできない」とドキドキしてしまう方も多いのではないでしょうか。
少しの彫りミスは落款印の「味」になるので、気にせず彫り進めましょう。
「このくらいで良いかな?」というところで、試しに印鑑を押してみてください。
5.仕上げの撃辺
撃辺とは、印鑑のフチにあえて欠けを作る作業を指し、この作業が最後の仕上げになります。
印鑑のフチをあえて欠けさせることで、味わい深い印影に仕上がります。
ただし、やりすぎで中の印影まで影響が出ないようにしてください。
落款印の世界を深める一つのポイント
それは、あえてキズをつけることです。 キズ一つない印面も素敵ですが、少しキズのついている印面の方が親しみを持てますよね。 もう一度、デザインをコピーして、キズを付けない場合とキズを付けた場合の両方を試してみてはいかがでしょうか。 理想の印面にできたら、最後に印面を軽く研磨してください。 汚れやカスを取り除くためにも欠かすことが無いようにしましょう。 ここで研磨をし過ぎてしまうと、印面が消えてしまいます。 「終わり良ければすべて良し」です。 最後まで気を抜かずに、落款印を完成させましょう。
まとめ
今回は、落款印の中でも引首印と遊印の作り方についてご説明しました。 姓名印と雅号印も今回ご説明した方法で作ることができます。 しかし、言葉をどうやって枠の中に収めるかなど、引首印と遊印に比べると難易度が高いです。 そのため、最初は引首印と遊印で落款印の作り方を練習しましょう 最初は一文字の落款印を作り、どんどん文字数を増やしていってください。 これを繰り返すことで、そのうち自由に落款印を作れるようになります。 落款印を作って、今の趣味を深めたり、新しい趣味にしたりして、あなたの世界を広げませんか?