2023.7.30カテゴリー:印鑑について 印鑑の種類について
契約書等には印鑑を押印するのが一般的です。
そのため、特にこれからビジネスで印鑑を使う際は、その印鑑が持つ法律的効力について理解しておく必要があります。
逆に、これらをしっかりと理解していないと契約において契約相手とトラブルに繋がる可能性もあります。
そこで今回は、これから印鑑を使い始める方に向けて、印鑑の法律的効力についてご紹介します。
また、最近使われることが多くなった電子印鑑における法律的効力についても解説しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
□印鑑を押す意味とは?法律的効力はあるの?
印鑑は、日常生活やビジネスにおいて頻繁に使用されるものですが、実際に印鑑の法律的効力はどのようなものなのでしょうか。
この章では、文書に印鑑を押す意味と印鑑が持つ法律的効力についてご紹介します。
まず、文書に印鑑を押して印影を残すことで、文書作成者の意思表明になります。
例えば、契約した相手が後に契約に対して違反したり、不満を述べたりしてきた際に、「契約内容に同意した」という事実の証拠として残せます。
印影の法律的効力については、民事訴訟法228条4項でも触れられており、「私文書は、本人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という条文があります。
このように、文書に本人の印影があり、その印影が本人によって押印されたものであることに疑いがない場合は、その文書は法律的に正当性を持つということです。
一般的にも、「文書の内容を入念に確認しない状態で印影を残してはならない」と言われているように、印影を残すことによって法律的効力が発生し、本人の意思で同意されたという証拠になります。
また、もし文書に印影が残されていなくても、契約に効力は持たせられます。
法律上では、契約は当事者の合意によって成立するもののため、印影はその文書の信用性を高めるための一つの手段に過ぎません。
例えば、契約文書に押印がなかった場合でも、ビジネスにおいては、契約に至るまでに何度か書類やメールなどでやり取りをすることが多いでしょう。
その際の送受信記録を保存したり、重要な連絡事項においては直接の担当者のみならず決裁権を持つ上長や法務担当部長など、複数の人間に連絡することによっても、契約の真正性を高められるのです。
□署名という手段も!印鑑を押す以外の方法は?
前章でもご紹介しましたが、民事訴訟法228条4項に「私文書は、本人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」となっているように、押印以外にも署名という手段があります。
署名は、契約書等に手書きでサインする方法です。
日本で契約書等の文書を作成する際は、ほとんどの場合で、記名と押印か、署名と押印が求められます。
そのため、押印なしで署名のみのケースは少ないです。
これは、元々の日本の慣習に基づくものですが、条文上に明記されている通り、実は押印と同一の法律的効力を持ちます。
しかし、印鑑証明書を発行できる印鑑と違い、署名では本人のものかどうかを確認する手段が少ないのが現実です。
実際、外国企業と重要な契約を交わす際には、公証人によるサイン証明という制度が使われています。
□契約の際に使われる印鑑をご紹介!
実際、印鑑にはさまざまな種類があり、個人や法人がそれぞれの状況に応じて異なる印鑑を使用しています。
この章では、契約等に使われる印鑑についてそれぞれご紹介します。
*実印
印鑑登録がされている印鑑のことです。
個人の場合でも法人の場合でも実印は所有が可能です。
公的に認められた印鑑なので、複製されることがないように字体は複雑に作られます。
その信頼性の高さから、不動産取引等の高額な取引が発生する場合に使われるケースが多いです。
*認印
印鑑登録がされていない印鑑です。
字体は実印よりも簡易的に作られているケースが多く、実印のような重要な契約等ではなく、一般的な契約等に使われます。
*銀行印
銀行に届け出をした印鑑のことをいいます。
個人でも法人でも、銀行口座を保有していれば、銀行印を所有することになります。
窓口での振り込みや新規の口座開設などにおいて使われることが多いです。
また、実印か認印を銀行印として届け出るのがほとんどですが、その中でも認印を届け出るケースが大半を占めています。
*社印
印鑑登録がされていない法人の印鑑のことです。
法人における認印の役割を果たし、請求書や領収書など契約書以外の文書でよく使われます。
*代表者印
代表取締役印として使われる法人の代表者の印鑑を指します。
日本の企業では、代表者印を実印として登録し、それとは別に社印と銀行印を作るのが一般的です。
また、代表者印は法人の代表者が契約書等に同意していることを示すため、法人にとって重要な契約を結ぶ際に使われることが多いです。
□法律的効力が低い印鑑にはどんなものがある?
まず、法律的効力がほとんどない印鑑としては、シャチハタ印やゴム印があります。
これらは印影がゴムという素材に依存しています。
本来、本人が契約書等に同意したという証明を示すものとして印鑑が使われるため、衝撃や熱によって変形しやすいゴム製の印鑑は法律的効力の根拠にはなりません。
そのため、これらの印鑑は日常生活における宅配便の受け取りといった簡易的なものや、信用性が問われない場合に使われるケースがほとんどです。
また、先ほどもご紹介した認印や社印も必ずしも法律的効力があるとは言えません。
しかし、ゴム製の印鑑とは違い、変形しにくい素材で出来ているため、本人性を示すものとしては有効です。
□電子印鑑には法律的効力があるの?
電子印鑑は、本来の印鑑と違い、朱肉やインクを使って押印することはありませんが、法律的効力はあるのでしょうか。
ここでは、電子印鑑の法律的効力について見ていきましょう。
1.印影のみの場合
電子印鑑の場合、無料サービスやアプリを使って作成したものや、実印の印鑑で押印したものをスキャンして画像化したものがありますが、作成できるのは印影のみとなります。
このように簡単に作れますが、複製も簡単にできてしまうため、法律的効力はほとんどないといえます。
2.印影に電子証明書がある場合
電子署名がある電子証明書が印影に付属している場合は、重要な契約書や公文書に使えますし、社印にも代用可能です。
また、電子署名は検証プログラムを用いることによって、本人確認や押印日時が把握できます。
□まとめ
民事訴訟法228条4項で「私文書は、本人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」とあるように、印影を残すことにより、法律的効力が発生します。
実際、世間一般でも「文書の内容をしっかりと確認しないまま押印してはいけない」と言われていますが、これは印影を残すことによってその文書に同意したという証拠が残るためです。
また、印影を残す以外にも、署名という手段もあります。
署名については単体で認められることはほとんどなく、一般的には押印と一緒に求められることが多いです。
しかし、条文上には「本人の署名又は押印」と記載されているように、押印と同一の法律的効力を持ちます。
これから印鑑を使い始めるという方は、今回ご紹介したことを頭に入れた上で、トラブルなく印鑑を使うようにしましょう。
当社では実印や認印、銀行印など、さまざまな印鑑を丁寧に手仕上げで作成しておりますので、ぜひご利用ください。