2018.12.5カテゴリー:印鑑について
「初めて実印を作るけれど、どんなことに気をつければよいのか分からない」
「実印にふさわしい、使うべき書体ってあるんだろうか」
実印を今から作ろうとしている方の中には、どのようなことを自分で決めて、実印を作るべきなのかが分からない方も多いと思います。
実印を作る際には、主に印鑑の材質や、書体を自分自身で決めて実印の作成を依頼します。
とはいえ、実際に実印を作るとなると、どのようなことに気をつけて作成手続きを進めればよいか分からないですよね。
この記事では、主に実印にふさわしい書体に関して、他の書体と比較しながら解説していきたいと思います。
実印の書体である印相体や篆書体についてや実印以外の印鑑の種類、書体選びのポイントもご紹介しているので、印鑑を作成する際に参考にして頂けると幸いです。
□実印の用途
実印に適した書体の説明に入る前に、実印がどのような用途で用いられるのかについて軽く説明しておきたいと思います。
実印とは、自分が戸籍に登録してある名前を刻印し、役所にて登録された印鑑のことを言います。
印鑑には、他にも色々な種類がありますが、実印はこれらの中で最も重要性が高く、個人の契約や権利義務の発生に関わることが多い印鑑です。
一方で、例えば認印であれば、実印とは異なり印鑑の登録は必要なく、宅配便の受け取りの際など、日常生活において手軽に利用することができる印鑑となっています。
また、銀行印であれば金融機関での口座開設時や、保険の契約を行う時に捺印するものです。
銀行印も、実印と同様に登録が必要であるという点に注意しましょう。
しかし、実印はむやみやたらと使用することは避け、本当に大事な書類にのみ捺印するべき印鑑です。
ここからは、実印を用いるべき具体的なタイミングについて以下に列挙します。
*公正証書を作成するとき
公正証書とは、公証人が役場で作成した、法律行為についての証書です。
遺言書を作る時、お金の貸し借りを行った時など、当事者が公証役場に行って作成します。
ある権利関係について、当事者の間で合意を結び、文書を公的に記録しておきたい場合に利用されます。
この公正証書を作成する際に実印が必要となります。
*高額の取引を行うとき
大きなお金のやりとりを行う際には、実印を用いて契約をすることが多いです。
具体的には、マンションや一戸建て住宅などの不動産取引をするとき、住宅ローンの契約を結ぶときや、自動車を購入・売却するときなどが挙げられます。
□実印におすすめの書体
ここからは、実印に用いるべき書体について解説します。
結論から述べると、実印に使用するべき書体は印相体です。
印相体とは、吉相体という呼び名もあり、文字の形が複雑なものになっており、非常に読みにくくなっています。
以下で紹介する篆書体から派生した書体で、文字と文字、もしくは文字と印鑑の外側の円をくっつけることで、縁起の良さを示す書体となっています。
上記のように、個人が生活の中で行う取引のうち、非常に重要なものに実印は用いられることがほとんどです。
そのため、実印が簡単に偽造されてしまうと、すぐに自分になりすまして取引が行われ、自分や取引相手に多大な損害をもたらすことも考えられます。
社会における取引の信用や、個人の財産を守るためにも、実印は簡単に偽造されてはなりません。
したがって、実印を作成するとき、その書体には読みにくく、可読性が低いものが用いられることが多くなっています。
このような理由から、実印は印相体で作ることを弊社ではおすすめしています。
□印相体を使用するメリットとデメリットとは?
先ほどご紹介した通り、印相体には実印に適しているというメリットがあります。
そこで、ここでは印相体を使用するメリットとデメリットについても解説していきます。
まず、先述の通り印相体には「偽造されにくい」というメリットがあります。
それだけでなく、印相体の書体デザインは印鑑の耐久性を上げてくれるというメリットもあるのです。
印相体は篆書体をベースとしてデザインされています。
印影をよく観察すると、字が四方八方に伸びているのが分かります。
この印相体のデザインが印鑑の枠にぴったりと接するようになっていて、印鑑の耐久力を上げているのです。
印鑑の文字の部分が完全に枠に囲まれて強度が高まり、長い間使用しても印面が欠けるというトラブルも起こりにくくなります。
しかし、この印相体にはメリットだけでなくデメリットも存在します。
例えば、印相体の印鑑を実印として印鑑登録しようとした時に、役所の職員が印影を読み取れないことがあります。
特に、印相体には印鑑を作る職人の個性が出やすい書体です。
名前の漢字が複雑な場合は、さらに読み取りにくい印影になる可能性があります。
可読性の低い印鑑ほど偽造を防ぐ効果はあるものの、印影を読めなければ印鑑としては使えません。
そのため、稀に「印影が読み取れないため、登録できない」という状況が発生することがあります。
このような事態に備えて、当社では印鑑登録が出来なかった印鑑の返品対応を行っております。
もし、万が一作成した印鑑が実印として登録できなかった場合は返品サービスの方をご利用ください。
□実印以外の印鑑の種類とおすすめの書体とは?
*銀行印
銀行印は、銀行の取引や手続きで使用する印鑑を指します。
特に金融機関での取引や口座の開設、振替などの手続きに必要とされるものです。
実印としても使用できますが、複数の銀行での使用や頻繁な取引がある場合、偽造リスクを避けるために別の印鑑として作成することが一般的です。
*銀行印におすすめの書体
銀行印には、篆書体や古印体がおすすめです。
篆書体は難読性がありますが、線や文字の形ははっきりしているため、銀行職員でも照合が可能です。
古印体は、篆書体よりも読みやすく、丸味を帯びたデザインが特徴です。
また、実印と同じように印相体を選ぶこともあります。
印相体は文字が独特な形をしており、偽造されにくい特徴があります。
*認印
認印は、実印や銀行印とは異なり、特定の機関への登録や届出が不要な印鑑を指します。
そのため、大きさやデザインは個人の自由となっている印鑑もあります。
認印を使用する機会としては、婚姻届や転入届、郵便物の受け取りなどです。
日常的な手続きでの使用用途が多いため、難読性が高いものではなく読みやすい書体で作成しましょう。
*認印におすすめの書体
認印には、古印体や隷書体がおすすめです。
どちらも文字の可読性が高く、第三者でも確認しやすい書体です。
古印体は、墨溜まりや途切れのある独特な字体で、隷書体は字のうねりが特徴的です。
デザインに規定がないため、大量生産されたものを使用しても問題はありませんが、印鑑に少し個性を持たせるために、これらの書体を認印に使用するのもおすすめです。
□書体選びのポイント!
印鑑作成に関するルールは、実際には非常に少なく、基本的な要件としては、サイズにおいては1辺が25ミリメートル以下であることや住民基本台帳の文字であることなど、印鑑の判別や照合が可能であることが求められます。
しかし、書体に関しては、特定のものを選ばなければならないという厳格なルールは存在しません。
例えば、古印体だけが許される、あるいは文字は縦書きでなければならないといった制約はありません。
また、男性は隷書体、女性は篆書体といった性別に基づくルールも存在しないのです。
もちろん、特定の場面やTPOに応じて、一般的な慣習やゲン担ぎを考慮することもありますが、それはあくまで参考の1つとして捉えるのが賢明です。
印鑑は、日常的に使用するものであり、自分の好みや感性に合ったものを選ぶことで、使用するたびに気分が上がるようなものになります。
そのため、書体選びでは、自分の好みやイメージに近いものを選ぶことが大切です。
以下、その例を一部ご紹介します。
・難読性が高く、整ったイメージが好みの場合:篆書体、流篆体、ライン印グラフィー、タワー印グラフィー
・難読性が高く、崩したイメージが好みの場合:吉相体、バルーン印グラフィー、ロール印グラフィー
・難読性が高く、幾何学的な統一感が好みの場合:ディスク印グラフィー、バッジ印グラフィー
・読みやすく、柔らかなイメージが好みの場合:古印体、メイズ印グラフィー
・読みやすく、力強いイメージが好みの場合:隷書体、レンズ印グラフィー
書体のイメージを具体的に掴むためには、デザインサンプルを参考にすることが有効です。実際にデザインサンプルを見ることで、自分の好みやどのように映るかのイメージが湧きやすくなります。
□書体をデザインする際に注意すべきことは?
印鑑の書体にはそれぞれデザインする際に、注意しなければならないことがあります。
お客様が文字デザインを検討する際は、以下の3つの項目に分けて確認してください。
*フルネームの場合
印相体には得意な文字の組み合わせがあります。
具体的には、「変則的な文字数であること」「画数が多いものと少ないものの組み合わせであること」「カタカナとひらがなが混じった組み合わせであること」が挙げられます。
このような組み合わせは、印相体との相性が良くバランスを重視したい方におすすめの書体です。
反対に、漢字四字のみという場合は印相体ではなく、篆書体の方が相性が良いことがあります。
*名字または氏名のみの場合
まず、名字または氏名のみで印鑑の作成をご希望の方は、文字の並びが「縦」か、「横」かを選択します。
基本的には縦を希望される方は「印相体」、横を希望される方は「篆書体」を選択されます。
篆書体は元々の字の形が縦長であるため、横並びに適しています。
印相体は篆書体の線を伸ばして繋げるデザインなので、横並びにすると複雑になりすぎてしまいます。
そのため、印相体は横並びよりも縦並びにする方が適しているのです。
*篆書体にするか印相体にするかで悩んでいる場合
はじめに、篆書体がおすすめなのは「昔からある書体が良い」「お札に使われるくらい権威のある書体にしたい」「多少は読みやすい書体の方が良い」という要望を持っている方です。
印相体をおすすめできるのは「隙間無く彫って欲しい」「縁起の良い印鑑を作りたい」「複雑で偽造されにくい方が良い」という希望がある方々です。
篆書体にも印相体にもそれぞれの良さがあるため、どちらの良さを取るかを考えてみてください。
□男性・女性ごとの実印の書体の選び方とは
ここからは、男性・女性ごとの実印の書体の選び方についてご紹介していきます。
まず初めに、男性の書体の選び方についてご紹介していきます。
*男性の書体の選び方について
男性は、実印を押印したときに、その印影から威厳や力強さを感じるものを選ぶ方が多いです。
特に、起業をしようとする方、あるいは住宅の購入など、人生の大きな買い物をするのを機に実印の作成をする方は、縁起とともに風格を感じる字体を選ぶことがおすすめです。
そのため、おすすめの書体は、印相体(吉相体)です。
男性向け実印の書体として、最もポピュラーなものは、「篆書体」や「印相体」の2つです。
特別、それらの書体が良いという理由もないため、基本的には本人が気に入るもので選んでも良いでしょう。
しかし、印影偽造などの可能性を考慮した場合、印影が複雑に作られた印相体が最も良いとされています。
男性におすすめの書体として、印相体(吉相体)と隷書体を挙げました。
これらの書体についての特徴はしっかりと押さえておきましょうね。
次に、女性の書体の選び方についてご紹介します。
*女性の書体の選び方について
女性は、エレガントさ上品さとともに、その印影から美しさや優雅さを感じるような字体を選ぶ方が多いです。
女性の方でも、起業を考えたり、印影に力強さを求めたりする方は男性と同じように実印に印相体(吉相体)を選ぶ方もいるでしょう。この書体は偽造されにくいのも特徴の1つになります。
昨今、女性に人気なのは隷書体です。
可読性が低く偽造されにくい字体のため、重要な契約に用いられることが多い実印には最適と言えるでしょう。
中でも特に女性に人気の書体は「太枠篆書体」と言うものです。
篆書体から派生してできた書体のため、可読性の低さはもちろん、篆書体よりも少し軽やかで優しい印象を与えてくれるでしょう。
外枠が太い分、丈夫になっているのも魅力と言えます。
女性におすすめの書体として、印相体(吉相体)と隷書体を挙げました。
そしてここからは、印相体(吉相体)についてさらに詳しい説明をしますので、ぜひ参考にしてくださいね。
*印相体(吉相体)とは
印相体(吉相体)は実印に向いた書体です。
理由は以下の通りです。
・字体が複雑なので偽造されにくいこと
印相体の文字は、一見しただけでは読みにくいです。
読みにくさという点は非常に大切な要素の一つになります。
実印は、最も重要な印鑑なので、簡単に複製されたり偽造されたりしないことが求められます。
また他の書体と違って、オリジナル性を出せるのも特徴と言えます。
彫刻士の意匠を反映できるためあなただけの印影(印鑑の文字のデザインのこと)を作ってもらえます。
・欠けにくいこと
他の書体と比べた際の印相体だけの特徴として、周りの「枠」との接点が多いということが挙げられます。
枠との接点が多いので、その分枠が欠けにくいというメリットがあります。
印鑑が欠けてしまうのはほとんどが「枠」の欠けです。
しかし、実印の場合、文字部分が問題なくでも枠が欠けてしまうとそれだけで実印としての効力を失ってしまいます。
そして、新しく実印を作り直し、印鑑登録をし直す必要があります。
そのことから、欠けにくい印相体は実印向きと言えます。
・縁起が良いこと
印相体が縁起の良い吉相体と呼ばれる理由としては、文字が外枠と接し、外へ外へと伸びるデザインであることが挙げられます。
そして、印鑑の丸い枠の中に文字がぎゅっと詰まってデザインされた文字であることも理由と言えます。
縁起を大切にしたい、という伝統や風習から培われた書体が印相体です。
□他の印鑑の書体
ここからは、吉相体以外の書体についても説明したいと思います。
*篆書体
印相体と同じように、可読性の低さが特徴で、銀行員や個人の実印として用いられることが多いです。
歴史が古く、日本最古の印鑑といわれている国宝の文字にもこの書体が使用されています。
他にも、パスポートの日本国旅券の文字もこの書体で印刷されています。
また、印鑑だけでなく、書道でもこの書体が使われることもあります。
*隷書体
篆書体を簡略化し、読みやすくしたものがこの書体です。
実印よりも、認印として作成する際に用いることが多くなっています。
印相体や隷書体には曲線が多く入っている傍ら、隷書体は直線的な形状が特徴で、非常に読みやすいものとなっています。
*古印体
隷書体から派生し、日本で独自に生まれた書体が古印体です。
この書体も、隷書体と同じように、読みやすさが特徴であるため、認印を作る際に頻繁に用いられます。
線と線が交わる部分が太くなっていることや、線の太さに強弱があることが大きな特徴です。
□まとめ
この記事では、実印にふさわしい書体や他の書体との違いを解説しました。
様々な用途に用いるためのバラエティーに富んだ印鑑が存在しており、それぞれの用途に合わせて、印鑑の書体が使い分けられていることが分かっていただけたと思います。
数ある書体の中から1つを選択することは難しいものです。
自分の好みやイメージに合ったものを選ぶことで愛着も湧くでしょう。
今回ご紹介したおすすめの書体やデザインを参考にして、印鑑作成にぜひ活用してください。
弊社では、実印はもちろん、認印や銀行印など、様々な種類の印鑑の作成を承っております。
また、Web上でのお申し込みも受け付けておりますので、お気軽にご利用いただけます。
印鑑の作成に関して、何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
印鑑作成後に実印として登録できない事情があった際は、完全返品対応も行っておりますので安心してご利用ください。