2017.9.5カテゴリー:印鑑について
皆さんは日頃仕事で使っている印鑑には、どのような法的効力があるかご存知ですか?
印鑑を「ビジネスに必要なモノ」として捉えている人はいても、その効力まで把握している人は少ないでしょう。
そのような認識のままだと、取引先との間にトラブルが起きた際、一方的に損失を被ってしまうことがあるかもしれません。
その損失は自分だけでなく、会社にも及びます。
これで、印鑑の法的効力を知ることの重要性をご理解いただけましたでしょうか。
今回を機に、ビジネスに関する知識を深めましょう。
今回は、印鑑の法的効力についてお伝えします。
仕事に使う印鑑とは
一般的にビジネスでは4つの印鑑を使います。
以下にそれらをまとめました。
将来、大きな過ちを犯さないためにも答え合わせをしてください。
・代表者印
・銀行印
・社印
・ゴム印
いかがでしたか?
きっとほとんどの方が合っていたでしょう。
間違えてしまっていた方も、これを機に印鑑の知識を備えてください。
では、それぞれの印鑑について、簡単に紹介していきます。
・代表者印
法人実印とも言われます。会社を設立する際に法務局へ届出を行う印鑑の事です。大きさや書体に規則などはありませんが、直径18cmの丸印が一般的と言われています。
・銀行印
銀行の法人口座に用いられる印鑑のことです。代表印と区別できるようにしておきましょう。
・社印
代表社印を用いなくても契約できる取引に用いられる印鑑の事です。
見積書などに使うため、使う機会が多い印鑑ですよね。
これも規則などはありませんが、角印が好まれています。
・ゴム印
サインの代わりに使える印鑑です。
会社の情報が彫られている印鑑であるため、失くしてしまうと悪用されてしまうかもしれません。
それを防ぐためにも、費用は掛かってしまいますが、項目が分かれているセパレート式の印鑑を用意するのがオススメです。
これら4つの印鑑を使って、ビジネスを円滑に進めていきませんか。
印鑑の法的効力について
先程、ビジネスに使用する4つの印鑑をお伝えしました。
それぞれの印鑑を使う場面は異なりますよね。
しかし、その法的効力はどれも同じと言われています。
何故なら、民法では口約束でも、お互いが合意していれば契約とみなされるからです。
もし、印鑑の種類で法的効力が変わってしまったら、印鑑だけで引き出しがいっぱいに成ってしまいますよね。
その上、押す印鑑を間違えてしまっただけで罪に問われてしまう事態に成ってしまいます。
そんな状況にしないためにも、印鑑の法的効力はどれも同じなのです。
「じゃあ、何で種類が分けられているの?」
このように思われた方もいらっしゃいますよね。
その理由は、印鑑によって有効性と立証性に差が生じるからです。
契約にトラブルがあり、法的に対処することが求められた際、「誰と誰が合意をして契約をしたのか」ということが重要となります。
もし、代表者印で契約を結んだ場合、個人ではなく、会社の意思でその契約を結んだとみなされます。
会社の意思で契約を結んだ分、その有効性も確実なものと成るのです。
代表者印は、法務局へ届出を行っているため有効性、立証性も非常に高いとされています。
このように他の3つの印鑑も有効性、立証性に差があるのです。
また、印鑑を押す場所や印鑑の押し方によっても印鑑の効力は異なってきます。
印鑑の押し方を正しく理解していなければ不利益を被る、またはトラブルに巻き込まれる可能性があります。
場合によっては罰則が科されるかもしれません。
そういったことにならないためにも、印鑑の正しい押し方について理解しておきましょう。
正しく印鑑を押す方法と種類は以下の通りです。
・契約印
契約印とは、名前の上、または署名欄の後ろに押す印鑑のことを呼びます。
どの位置に押さなければならないという決まりは特にありません。
しかしながら、あまりにも署名から離れた場所に押してしまうと、捨印と勘違いされる恐れがあるため注意が必要です。
できるだけ名前に近い位置に印鑑を押す、または名前にかぶせて印鑑を押すように心がけましょう。
・契印
契印とは、複数のページで契約書の構成が行われている際に、見開き部分へ印鑑を押すことを呼びます。
これによって、契約書の部分的な差し替えを防げる効果があります。
契印として用いる印鑑は、契約印で用いた印鑑を用いる必要があるため、覚えておきましょう。
ただ、製本テープを用いて製本されている契約書の場合、表紙や裏表紙、帯にまたがって押印する必要があります。
以上のことから、押印する契約書のページ数が多い場合、製本することで契印の必要数を減らせるため、契約書作成に要する時間短縮に役立ちます。
・割印
割印は、2部以上になる契約書に押すもののことを指します。
例えば、原本のみでなく、写しがある場合などです。
それらの契約書をずらしてから、重ねて両方をまたいで印鑑を押します。
これによって、不正コピーや契約書を改ざんされないようにする効果があるだけでなく、それら2つの書類に関連性があることを示します。
この場合は、契約印と同じものである必要は特になく、別の印鑑でも割印として使用できます。
・消印
消印は、契約書に収入印紙の貼付を行った際に、契約書と印紙をまたいで押す印鑑のことを指します。
消印があることで、既に使用した収入印紙を再利用されることを防ぐ効果があります。
基本的に、契約書の作成者、代理人、契約当事者のうちのどれかの印鑑であれば問題ありません。
収入印紙に消印が押されていない場合、その印紙税は納められたことにならないため、過怠税を課されます。
そのため、必ず消印を忘れないように押すよう気をつけましょう。
・訂正印
訂正印とは、契約書の内容や文面に誤りがあった際に、その誤った部分を修正、または訂正するために押されるものです。
訂正されたものが、他者によって改ざんされたものではなく、本人が行ったものであるということを示すのが目的です。
そのため、必ず契約印と同じ印鑑を使用する必要があります
訂正印の使い方は、ボールペンで訂正したい箇所に二重線を引いた後、線の近く、もしくはその上に訂正印を押します。
その後に、訂正後の正しい内容を近くの空欄に書き込みます。
この際に、欄外に何文字削除したのか記載しておくと、より丁寧な訂正方法になるでしょう。
市販で訂正印として小さい印鑑が売られていますが、訂正印として契約印に用いた印鑑以外が用いられている場合、契約者ご本人による訂正かどうか判断できません。
そのため、契約印と異なる印鑑は用いられません。
・捨印
捨印とは、契約書に記載されている文書に複数個所誤りが見つかる見込みがある場合に、一度だけ訂正印を押しておくことを呼びます。
契約書の上部に押す、または捨印欄がある場合は、捨印欄に契約書と同じ印鑑で押すのが一般的でしょう。
2ページ以上で契約書が構成されているのであれば、全て同じ場所に印鑑を押すようにします。
ただ、捨印を押す際に注意しておく必要があるのは、捨印が押された契約書はすべての修正を相手に委ねるという意味になることです。
そのため、捨て印を用いると、作業自体は円滑に進みますが、油断していると契約金額や条件、日数などを相手に書き換えられる可能性があります。
そのため、契約を正しく結ぶためには、原則捨印は押さないようにするという判断も1つの手でしょう。
契約において最も重要な事とは
ところで、契約において最も重要な事は何かご存知ですか?
それは、「両者の合意」です。
印鑑はそれぞれの合意を示すために欠かせない道具と言えるでしょう。
印鑑は手のひらに収まってくらい小さいですよね。
しかし、時には我々の手に余るくらい、役割が重くなることもあります。
印鑑の役割を軽視して用いてしまい、トラブルに成ることが無いようにしましょう。
ところで、契約を結ぶ際、署名と捺印をされた経験がありますよね。
「印鑑だけでも良いんじゃないの?」
このように思われたことも一度や二度ではないでしょう。
今までの内容を振り返れば、代表者印のような有効性、立証性の高い印鑑であれば、署名する必要を感じませんよね。
実は、筆跡は人によって異なる為、印鑑よりも証拠能力が高いのです。
偽造されたり盗まれたりする可能性がある印鑑に比べて、それらが難しい筆跡の方が信用できるのは納得できる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
会社法においては、取締役会議事録に出席した取締役の「署名または記名押印」を求めています。
ここからも、法的に署名がどのくらい重要なのかを知ることができますよね
署名は、その人がその取引に合意したことを示す有効な手段です。
印鑑だけでなく、署名の法的効力の高さを把握しておきましょう。