2017.9.15カテゴリー:印鑑について
皆さんは落款印についてご存知ですか? きっと誰もが一度は見たことがあるでしょう。 落款印とは、書道や日本画の作品に捺される朱色の印鑑の事です。 「作品を完成させたこと」、「落款印を捺した人の作品であること」の2つの意味が落款印で示すことができます。 それだけでなく、落款印を捺すことで作風が引き締まり、趣のある風雅が生み出されるのです。
「絵は描くけど、日本画とかは描かないかなぁ」 このような方もいらっしゃいますよね。 落款印は日本画などにしか使えないわけではありません。
最近では絵葉書や年賀状などに使われることもあるそうです。 それらは遊印と呼ばれ、自由に楽しめる印鑑として使われています。 このように落款印は、その人の性格や品格を示すのに最適な印鑑です。 これを読んで、落款印に興味が出てきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、その方々に向けて、落款印の始め方をお伝えします。 落款印であなたの世界を広げませんか?
落款印の種類について
先程、趣味の印鑑とお伝えしましたが、落款印には決まりがあります。 捺す場所によってその呼び方なども変わる為、間違った使い方をしないようにしましょう。 落款印は捺す場所によって、その名前が変わります。 ・引首印 ・姓名印 ・雅号印 ・遊印 それぞれを詳しく説明していきます。
引首印
引首印とは、作品の右上に捺した落款印の事です。 引首印は、作品の「初めのしるし」として捺され、官房印とも呼ばれることもあります。
形としては、縦に長い長方形や楕円が用いられることが多いです。 彫る文字としては、座右の銘や祝い言葉など、好きな言葉を彫って構いません。 そのような言葉を彫った落款印の事を「成語印」というそうです。 成語としては、以下のような言葉があります。
・閑雅
・従心
・高志
・自在天
・心如水
・行雲流水
・風化雪月
それぞれの意味は以下の通りです。
・閑雅
静かでおしとやかなこと
・従心
心のままに行動すること
・高志
志を敬う心のこと
・自在天
何にも縛られない心境のこと
・心如水
心が清らかで固執しないこと
・行雲流水
雲や水の様に、時の流れなどに従って行動すること
・風化雪月
四季の美しい風景のこと
これらの他にも様々な成語があります。 自分の心境にふさわしい成語を見つけてみたり、作ってみたりしてはいかがでしょうか。 作品に引首印を捺すことで、その言葉を強く胸に刻むことができます。
落款印を捺すことで、作品の雰囲気だけでなく、自分の気持ちをも引き締めることができるでしょう。 自分の好きな言葉で、引首印を作ってみてはいかがでしょうか。
姓名印
作品の最後に捺す落款印のことです。 姓名印は「指名印」とも呼ばれることがあります。 その名の通り、姓名印には作者の本名を彫るのです。 そうすることで、この作品を書いた作者を示すことができます。 姓名印を作って、親しい間柄の人と絵葉書などを送りあってみてはいかがでしょうか。
雅号印
雅号印も作品の最後に捺す落款印の事です。 雅号印は誰でも使うわけでなく、雅号を持っている作家さんが使います。 姓名印と同じ場所に捺すように思えますが、捺す場所はしっかりと決められているのです。 上に姓名印、下に雅号印を捺すのが決まりになっています。 一般の方は雅号を持っていませんが、これを機に雅号を作ってみてはいかがでしょうか。 青春時代の感性で落款印を作ってみれば、新鮮な気分を味わえるかもしれませんよ。
遊印
遊印は今までの3つと違って、捺す場所は決まっていません。 作品を飾る程度に自由に捺すことができるのです。 引首印と同様、好きな言葉を彫ることができます。 冒頭にもお伝えしたように、このような特徴を持つ印鑑は、作品の魅力を引き上げますよ。 遊印が一つでもあれば、今までの生活に新しい楽しみが増えることでしょう。 遊印を作って、絵葉書などを始めてみてはいかがですか。
印影の色について
印影の色には、2種類あります。 それぞれ印影に移す文字の色が名前に成っているため、混合することが無いようにしましょう。
1つ目、白文印
赤のベースに文字が深く掘られる印面が白文とされます。 文字を周りよりも深く掘ることで白文印ができるのです。 姓名印は基本的に白文で作られます。 手間をあまりかけずに作れるため、一度試されてみてはいかがでしょうか。
2つ目、朱文印
白のベースに赤い文字が捺される印面が朱文とされます。 文字の周りを深く掘ることで朱文印ができるのです。 姓名印に対し、雅号印は白文印が作られます。 手間はかかりますが、その分心地良い達成感を味わえるでしょう。 時間がある時に作ってみませんか。
落款印の作り方
落款印を作る際は、印材の種類やサイズ、書体を決める必要があります。
印材の種類
印材には沢山の種類があり、当店では薩摩本柘や楓、アグニ、黒水牛、オランダ水牛、琥珀、黒檀、白檀、ナツメ、パールグラス、ブラストチタンなどを取り揃えております。
落款印の印材には石が選ばれることが多いですが、木材である薩摩本柘、黒水牛、金属などで作られることもあります。
また、印鑑の上下を認識するために印鑑の側面につけられたアタリがある落款印もあります。
薩摩本柘や楓、アグニなどの木材系の印鑑素材は、朱肉が染み込みやすく、朱肉の油を吸い上げることによって劣化が進み、もろくなってしまう恐れがあるので、捺印後のメンテナンスはしっかりと行いましょう。
印鑑のサイズ
印鑑のサイズは、18.0ミリメートルから24.0ミリメートルが人気のサイズとなっています。
当店では、10.5ミリメートルから24.0ミリメートルまでのサイズを取り揃えています。
作品の大きさによって、見栄えの良い落款印のサイズを選びましょう。
例えば、絵葉書や年賀状には10ミリメートルから12ミリメートルのものを、書道用の半紙や色紙には10ミリメートルから15ミリメートルのものを選ぶと良いといわれています。
使える書体
落款印で使われる書体には、篆書体や印相体、古印体、行書体、楷書体などがあります。
当店では、基本的に篆書体、印相体、古印体、隷書体、楷書体の中からお選びいただけます。
自作する方法
落款印の作成は、印鑑の専門店にオーダーする以外にも、自作する方法があります。
まずは、彫りたいデザインや文言を決め、それを真っ白な紙に書き、レーザープリンターでコピーを行います。
次に、転写を行うために、印材となる石を平らになるまでやすりがけを行い、平らになった印面に朱色の墨を塗ります。
その後は、コピーしたデザインの紙を裏返し、印面に合わせ石に固定します。
黄色のマジックで印面を塗りつぶすと石に転写されます。
最後は、乾くのを待ってから彫刻刀を使って印鑑で写したくない部分を削っていきます。
試し押しを行い、軽くやすりがけをして印面を平に整えられれば、完成です。
落款印に質感を出すために、あえて傷や欠けを作り、風合いを演出すると完成度が高くなります。
書体について
1つ目は、篆書体です。
篆書体は、秦の時代に使われていた書体を指し、文字の太さが常に一定で、横字は水平、縦字は垂直、全体的に縦長になるのが特徴です。
また、基本的に左右対称の書体で現在でも書道や印鑑で頻繁に使用されています。
さらに、可読性が低く、偽造されにくいことから印鑑だけでなく、パスポートの表紙の印刷にも使用されています。
2つ目は、印相体です。
篆書体をベースに作られた書体で、篆書体を印鑑の枠部分に向かって四方八方に広げたデザインとなっています。
中心から外へ八方に広がることから、八方篆書体や吉相体とも呼ばれています。
また、可読性が低く、盗用・偽造防止に効果が高いといわれています。
さらに、幸運を引き寄せる縁起の良い書体としてもよく使用されています。
3つ目は、隷書体です。
これは、篆書体を簡略化し直線的な形状にした書体で、読みやすいという特徴があります。
また、左右に払い出す波磔があり、字が横長なのが特徴です。
4つ目は、古印体です。
隷書体をベースに日本で作られた書体といわれています。
これは、鋳造印にできる特有の欠けや途切れなどを元に作られた線の強弱が特徴で、全体的に丸みのあるデザインとなっています。
5つ目は、楷書体です。
こちらも隷書体から派生した書体で、字形を崩したり、点画を省略したりせずに一画一画をきちんと書くのが特徴です。
6つ目は、行書体です。
一画一画をきちんと書く楷書体に対して、行書体は流れるようなイメージで、線が連続したり、省略されたりする書体です。
まとめ
今回は、落款印についてご説明しました。 落款印の中にも多くの種類がありますが、一番手軽に始められるのは引首印と遊印でしょう。 どちらも印面の色に決まりはないため、手軽な白文印で作ることができます。 今回の記事を機に落款印を作ってみてはいかがでしょうか。